楽曲「星へ」「サラー、サラー、サラー」詳細&歌詞

楽曲「星へ」「サラー、サラー、サラー」詳細&歌詞

動画シリーズ「LIVE SHIGA」で公開した楽曲「星へ」「サラー、サラー、サラー」は、岩手県大船渡市で教わった郷土芸能に着想を得て作曲したもの。
2019年に三陸国際芸術祭アーティスト・イン・レジデンスに参加し、主に金津流浦浜獅子躍、石橋鎧剣舞の二つの郷土芸能を習いながら滞在制作を行った。

 


「星へ」


「星へ」は、金津流浦浜獅子躍(かなつりゅううらはまししおどり)の太鼓のリズム、舞のステップ、そして歌の節回しを元に作曲した。(→演奏動画
金津流獅子躍は、獅子頭を頭に付け、太鼓を腰下に構え、歌、太鼓、舞を全て行う郷土芸能である。
リズムは主に「ザコンコ」と呼ばれる金津流獅子躍の基本のパターンを元にしている。
「ザコンコ」は「ザンジキシッコンザンジキシッコンザコンコザンコン」という口唱歌で教えられた。
このリズムは舞のノリに合わせて、イーブンに感じられる場合も、ハネても感じられる場合もある。
「星へ」ではハネて感じられる場合の「ザコンコ」を基本的なグルーヴに据えている。
 

稽古の様子。初めて獅子頭を着けて「ザコンコ」のステップを踏んでいるところ。

歌のメロディにおいても、獅子躍の演目に出てくる歌の節回しを元に発展させた。
歌詞は、震災と津波の被害に対峙し、鎮魂の儀礼としての重みを深く受け止めている伝承団体のエピソードや印象を元に創作した。

もう一つの基本的なパターン。口唱歌は「ザンジキジキジキジッチキジッコン」。「座布団」とも言われる。


「星へ」歌詞:
 
誰も名付けぬ星に請えば
かげのまたたきこちらを見やる
それはうつくし それは私を奮わす
捨てるものもう何も残さず
宝 誇り 犬に食わせ
それで私は そこで私は 一度確かに笑おう
息吹の中に集めた扉 守れ夜を越えて
息吹の中に集めた扉 放て封裂いて

誰も名付けぬ星に請えば
風にくるまる脚は笑う
それはうつくし それはおそろし それは心地の良い
沈む船の咎も忘れて 抱く潮の川を流れて
空に溺れりゃ 空に溺れりゃ 星は私の楷になる
息吹の中集めた扉 守れ夜を越えて
息吹の中集めた扉 放て封裂いて

そっと快楽に触れるようさ 此処に懐いたまたたきは
そっとあなたと漕ぎ出そうか 共に渡ろうあの星へ
戦う朝に落つまで

そっと快楽に触れるようさ 此処に懐いたまたたきは
そっとあなたと漕ぎ出そうか 共に渡ろうあの星へ
呼び寄せた風 長い雨 柔らかい鉈 紫陽花の陰で 育つだろう 戦う朝に落つまで

 

「金津流浦浜獅子躍」参考映像

 

 


「サラー、サラー、サラー」


「サラー、サラー、サラー」は、石橋鎧剣舞(いしばしよろいけんばい)の笛と太鼓によるお囃子を主な着想元としつつ、舞の持つ身体感覚や、伝承している地域コミュニティの印象などから作曲した。(→演奏動画
石橋鎧剣舞は、仮面と鎧を纏った舞手と、笛、太鼓によるお囃子で演じられる芸能。舞手のうち一人は「ささら」と呼ばれる竹製の楽器を鳴らす。また太鼓奏者は念仏も唱える。
特に、お囃子のなかの4+3といった複合拍子で捉えられるフレーズに着目し、同様のリズムを基調に作曲している。
 

石橋鎧剣舞の太鼓と念仏の稽古。
石橋鎧剣舞の舞の稽古。

歌詞においては、山の中の伝承館で、柔らかな地域コミュニティに受け継がれている姿を意識して作詞した。

 

「サラー、サラー、サラー」歌詞:

また来る季節の匂い
団居す夜の賑わい
捧げる遊びの魂の
守る細道

高くより水は落ちて
頭から足と洗う
踏まれた土は応えて
虫の色を放つ
海まで開く扉へ

また来る季節の匂い
境を渡る戸惑い
涙は呼ぶ声を聞き
静かな息を広げる

朝に降りてくる
雪のようなかげ
照らす大地には
装束が叩く
響きの交わり
遠くにきこえた

私は裸で
石に触れていて
貴方の隣で
開かれていよう
扇をあおいで
川を上るから

連れ帰るよ 白鷺の羽風

また来る季節の匂い
団居す夜の賑わい
経る年は酒を澄まし
峰への道を伝える

側に寄る時は
讃えられるとき
つぶさにとらえて
翻る夢を
ここは崩されぬ
語りのある家

朝に降りてくる
雪のようなかげ
照らす大地には
装束が叩く
響きの交わり
遠くにきこえた

私は裸で
石に触れていて
貴方の隣で
開かれていよう
扇をあおいで
川を上るから

連れ帰るよ 白鷺の羽風

  

「石橋鎧剣舞」参考映像



 

LIVE SHIGA Vol1,2 演奏メンバー:

佐藤公哉(Vo)
権頭真由(Acc / Pf / Cho)
荒井康太(Dr)
水谷浩章(Ba)
横手ありさ(Vo)